左官の仕事に興味はあるけれど、「実際、日当ってどれくらいもらえるの?」というのは、多くの人が最初に抱える疑問だと思います。求人票を見ても「要相談」と書かれていたり、現場によってばらつきがあったりして、なかなか相場がつかみにくいのが実情です。
特に未経験から始める人にとっては、収入がどのくらいになるのかを知らないまま飛び込むのは不安が大きいもの。また、ある程度の経験がある方にとっても、「今の単価は妥当なのか?」「地域差ってあるの?」といった悩みはついて回ります。
左官の世界は、腕前や働き方によって評価が分かれる職種です。その分、日当にも幅があるのが特徴。そこでこの先では、地域や経験、雇用形態といった観点から、実際の日当相場を現実的に解きほぐしていきます。
地域でどう違う?左官の日当目安一覧
左官職人の日当は、エリアによって想像以上に差があります。たとえば東京都内では、熟練者であれば日当2万円前後という声も聞かれますが、同じ内容でも地方都市では1万2000円前後というのが一般的。これは単に物価の違いだけでなく、建築需要の規模や人手不足の度合いにも左右されます。
関東圏や大都市では、大規模案件や工期の短い現場が多く、左官職人への需要も安定しています。これに対し、地方では年間を通じて仕事量に波があり、結果として単価が抑えられがちです。また、繁忙期と閑散期の差が大きい地域もあり、年間で見ると「高単価だが仕事が少ない」状態になることもあります。
一方で、地元密着の工務店やリフォーム業者と直接取引している左官職人は、継続的な案件を得て日当よりも安定した収入を確保するケースもあります。こうした場合は、単価そのものよりも「仕事の継続性」を重視する傾向があります。
また、地方でも資格を持った職人や特殊仕上げに強い人材は重宝されており、単価の底上げ要因になります。地域内での評判や人脈によっても単価に差が出るため、「地域=単価の絶対値」とは限らない点にも注意が必要です。
未経験とベテランでどれだけ違う?
日当の差は地域だけでなく、経験年数や持っているスキルでも大きく開きます。未経験で入ったばかりの人は、最初の1年は見習いとして日当8000円〜1万円程度からスタートするのが一般的。ここには材料運びや養生作業、現場清掃など、直接的な左官作業以外の雑務も多く含まれます。
しかし、道具の扱いや仕上げの精度が一定レベルに達してくると、徐々に評価されるようになります。たとえば3〜5年程度の経験者で、現場を任されるレベルに達すれば、日当は1万4000円〜1万8000円ほどに上がることもあります。ここでは、仕上げのスピードや品質だけでなく、現場の段取りや他職との調整力なども評価対象になります。
さらに、一人で完結できる左官職人や、左官技能士(国家資格)を取得している人、特殊仕上げに対応できる人は、日当2万円超えも現実的です。こうした職人は、元請けからの信頼も厚く、指名での発注が入ることもあります。
ただし、日当が上がる一方で、求められる責任や成果も高くなっていくため、単に「経験年数が長ければ高単価」というわけではありません。信頼される人物であること、現場に安定感をもたらせることが、収入アップには不可欠です。
雇用スタイルで日当の「中身」が変わる
左官職人の収入は、日当の金額だけを見ても実態がつかみにくいのが現実です。なぜなら、正社員・日雇い・個人事業主といった雇用形態によって、同じ「日当2万円」でも手元に残る金額や働き方が大きく異なるからです。
まず、正社員として建設会社や工務店に所属する場合は、日当ではなく月給制になることが一般的です。賞与や手当、社会保険がある代わりに、1日あたりの収入は抑えめになる傾向があります。ただし、現場がない日でも固定給が出るため、収入が安定しやすいというメリットがあります。
一方、日雇いや応援といった形で働く職人は、日当制で動くことが多く、稼働日数や現場の単価に応じて収入が変動します。天候や工程の都合で急にキャンセルされることもあり、年間通して見ると想定よりも低収入になる場合もあります。
また、個人事業主(いわゆる一人親方)として働く場合、見かけ上の「日当」は高めでも、そこから経費や保険料、交通費などが差し引かれます。たとえば日当2万円でも、材料費・移動費・外注費がかさめば、実質的な利益は1万円前後に落ち込むこともあります。
このように、「日当○円」と一言でいっても、その意味合いは雇用形態によってまったく異なります。収入の数字だけで判断せず、どのような条件で働くのか、自分にとって何を優先したいのかをしっかり整理することが重要です。
スキルだけじゃない。信頼と段取り力も武器になる
日当を上げたいと考えたとき、技術力の向上はもちろん重要ですが、それだけでは不十分です。むしろ、現場で信頼される人間関係や段取り力のほうが、単価に大きく影響することも少なくありません。
たとえば、材料の搬入時間に合わせて効率的に動ける、他職との調整を自発的にこなせる、天候や工程の遅れに柔軟に対応できる──こうした「現場全体を見渡せる力」を持つ職人は、元請けから重宝されます。単に仕上げがうまいだけの人よりも、「任せて安心」な人のほうが、継続的に呼ばれやすく、日当アップの交渉も通りやすくなります。
また、若手や応援の人に適切に指示が出せる人は、現場全体のスピードと品質を引き上げる存在として評価されます。その結果、現場代理人からの信頼が増し、チーム単位での仕事依頼につながることもあります。
さらに、資格や実績だけでなく、日ごろの礼儀や受け答え、現場の清掃状態までが信頼に影響する場面も多くあります。「この人にはまた頼みたい」と思わせるような対応が、結果として収入面に跳ね返ってくるのです。
日当を上げる近道は、単なる技術勝負ではありません。現場で信頼を得られる行動を日々積み重ねていくこと。これが、同じ経験年数でも「差がつく」職人になるための現実的な道筋です。
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「相場」はある。でも自分次第で越えられる
左官職人の日当にはある程度の相場がありますが、それはあくまで「目安」にすぎません。経験や地域、雇用形態によっても幅があり、その中でどう自分の価値を高めていくかが収入を左右します。
重要なのは、周囲と比べて一喜一憂するのではなく、自分にとって納得できる働き方と収入をどう実現するかを考えること。そのためには、技術を磨くだけでなく、信頼を得る行動や段取り力、そして無理のない働き方を模索することが大切です。
職人としての価値は、数字だけでは測れません。日々の積み重ねが、いずれ「相場以上」の働き方をつくっていくはずです。
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